アーカイブ ‘ 2014年 5月

ウィーン発「幼稚園のための5分間創作」──偉大な創作家の〝まね〟をしよう

3月、ウィーンを訪れたとき、本屋で見つけた小学生用の創作ブック。
幼稚園用があいにく書店になかったので、インターネットで購入してみました。
かなりそそられる一冊です。『幼稚園のための5分間創作』


幼稚園のための5分間創作

 

コンセプトは、「偉大なアーティストをエミュレートする」。
さまざまな画家やクリエーターの作品をヒントに、作品作りを行うというものです。

copyコピーでもなく、imitateイミテートでもなく、mimicミミックでもなく、
「emulateエミュレートする」。
これらの単語って、日本語だと「まねをする」という言葉でひとくくりにされがちですが、
copyは完璧な模倣、
imitateは「いいね!」と思ったものの模倣、
mimicはときに受け狙いの模倣、
そしてエミュレートは、〝対象物を賞賛し、〝それを凌ぐものを作ろう〟という意思を持って模倣する〟
という極めて教育的な意味を含んだ単語です。

 

さて、上のサイトには、「中身拝見」機能がついているのですが、
(表紙画像の上の、開いた本のアイコンをクリック。ダウンロードには少々時間かかります)
肝心なemulateしているところがわからないようになっていて残念でした。

少し、具体的に紹介すると、中身拝見のp13に掲載されているこのアクティビティは、

カンディンスキーのエミュレート

最終的に、ガラの部分を丸く切り抜いて、黒い紙に自由に貼り付けて完成させます。
そのお手本にしたのが、カンディンスキー『いくかの円』。

カンディンスキー『いくつかの円』

※ロシア人のカンディンスキーは今年で没後70年を迎え、版権が切れたようです。

こんな具合に、ピカソやクレー、モネ、クリムト、フンデルトバッサーなどなど、はては、アルタミラの遺跡画まで、
さまざまな技法で「まね」ています。
(中には、「何で、これ?」というのがあったのは否めませんが)。

 

「人のまねはいけません」とは、よく言われるのだけれども、
それは、「自分の考えを放棄して、ズルをする魂胆がある場合に限る」と私は思っています。

幼児期にまず必要なのは、「わー、すごい!」という前のめりの体験をたくさん積むこと、
そしてそれが刺激になって、自分もやるぞという前向きの気持ちが醸成されていく。
基本的に、これが教育の根幹なんじゃないかと思ってるんですが、どうでしょう。

その「わー、すごい!」の対象はときに偉大な人物だったり、友達だったり、
先生だったりしていいのだと思います。

このアクティビティで言えば、おとなは「こんなふうに作ります」ではなくて、
「カンディンスキーの絵が、私、大好きなの!」をどれだけ子どもたちに前のめりに
伝えられるかが勝負かもしれません。

ちなみに、私事ですが、私がイラストレータとして歩き出したとき、
発注されたイラストを、毎回違ったイラストレータのタッチをまねて描いていました。
3年間以上。
そのとき、心の中でつぶやいていたのが、

「あの坂本龍一だって、ビートルズのコピーからスタートしたんだ!」

でした。

 

ところで、紹介した本、
サイト内の「ebook」のページでオーダーしたのに、なぜか郵送でとどきました。
船便で1週間程度。郵送代はタダでした。

そして、今、再度ググってみたら、
アマゾンでも扱っていました(注・日本のではありません。8人のプレビューが全部★★★★★だった!)

もう、地球の裏側にして、むこうの本が簡単に手に入ってしまう時代なんですよね。
せっかくこの時代に生きているのですから、その恩恵にあずかっていきたい。
また素敵な本に出会えたら、ご紹介させてください。

(ちょっと、発行元へ感謝の意を) 
Um Verlag, Don Bosco Medien
Vielen Dank für Ihr wunderbares Buch!

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