中国の幼児教育事情(シンポジウムのメモ)
昨日、2015年2月8日、チャイルド・リサーチ・ネット(CRN)主催、
ベネッセ教育総合研究所共催のシンポジウムがありました。
題して、
第4回ECEC研究会「世界の保育と日本の保育~遊びの中に学びを探る~」
イタリア、フランス、ニュージーランド、中国の事例を、
榊原 洋一(お茶の水女子大学大学院教授、CRN所長)を司会に、
上垣内 伸子(十文字学園女子大学教授)
北村 友人(東京大学准教授)
周 念麗(中国・華東師範大学教授)
星 三和子(名古屋芸術大学教授)
森 眞理(立教女学院短期大学准教授)
という豪華な登壇者のかたがたからご説明いただく主旨のシンポで、
また新たな気付きがたくさんもたらされましたが、
今回はその国の当事者でいらっしゃる周先生のお話だけ、
簡単にメモします。
◉中国の先生が日本に来て一番好印象を持つのは、
トイレの清潔さと、こどもがたくましくて礼儀正しい事。
幼児教育については、日本を手本にしたいと考えている。
◉中国は、古来より「遊びはムダ」という伝統的概念に支配されて来たが、
海外との交流、理念の流入に因って、
近年、とくに2014年の方針転換では幼児期の遊びを重視する方向に変わった。
地方部では依然、集団的学習に偏る傾向は抜けないが、
北京都心部ではかなり浸透している。
探索遊び、芸術遊び、集中できる遊び等、充実している。
◉ただし、運動遊びは(日本に負けないよう頑張りたいが)都心部では現在、
空気汚染が深刻で、こどもの発達に欠かせない空、水、空気がないことが
悩み。
◉「商売」について積極的に考える民族性もあり、
クーポン(もしくは本当のお金?)を使った
「保育時間に子どもが食べるものを実際に作って
子ども同士で売ったり買ったりするような取り組み」もしている。
発表のあと、先生が発表の中で触れた「中国では今、6つのQを重視している」と言われた、6つのQとは何か個人的に質問したところ、
IQ = Intelligence Quotientいわゆるアイキュー。知能指数
EQ = Emotional Intelligence Quotient、エモーショナルアイキュー。心の知能指数
FQ = Financial Intelligence Quotient、フィナンシャルアイキュー。経済的知能指数
LQ = Learning Intelligence Quotient、ラーニングアイキュー。学習の知能指数
MQ = Moral Intelligence Quotient、モラルアイキュー。道徳の知能指数
PQ = Physical intelligence Quotient。フィジカルアイキュー。身体的知能指数
とのことでした。
FQについては、ここ最近の中国の経済不振も背景にあり、
それが幼児教育にも影響を与えているようです。
また、発表中に紹介された「男の子と女の子の部屋に分けた性別保育」は、
それほど多くはない事例だとしながらも、
「中国ではいま、男の子が危機なんです(=ボーイズクライシス)。
それで、男の子を男の子らしく育てなくてはという意図から、
このような性別保育が行われたりしています」と言われていました。
これはとても興味深い話でした。
日本ではジェンダーフリーが当たり前ですが、性差をごまかさない保育は、私が思うにある意味科学的であり、考えるに値するように思えました。
(アメリカの小学校でも、複数のコミュニケーションによってのびる女の子には共同学習、個々で丁寧に対応する事でのびる男の子には個別学習という方法を取り入れているところがあると2007年に聞いて、とても新鮮だった記憶があります)。
会の最終のまとめとして、学びか遊びか、認知の発達か否認知(情動)の発達かという二分論では考えないようにしたいというのが、
今回の着地点だったように思います。
全先生がたの話をまとめられずにすみません。
CRNやベネッセのサイトで報告があれば、ぜひそちらをご覧下さいね!