ブリューゲル『子どもの遊び』の中の謎なる遊び
3月、オーストリア、ウィーンの美術史美術館で、ブリューゲルの『子どもの遊び』(子供の遊戯)を見る機会がありました。
『子どもの遊び』は、1560年に描かれ、
その中に、250人以上の子が83ほどの遊びを行っている「百科事典的絵画」として紹介されています
(※以下、美術史美術館で購入した絵はがきから。100年以上経ち、版権フリー)。
片っ端から見ていくと、
左下のお手玉(使っているのは動物の骨)や、中央当たりの馬跳び(彼らは兎飛びと呼んだらしい)、
竹馬(奥の建物の前)など、
今の日本人にもなじみのある遊びが見つかります。
国も違えば、時代も違うのに、実に興味深いことです。
一体何をしているのか、全部つぶさにネットで調べてみました。
その中でもとくに、私が注目したのは、真ん中下の青い服を着た女の子の遊び。
拡大してみます。
初め、「もしかするとこれは、例のアラレちゃんの、あのお気に入りの遊び的なものだろうか?
いや、きっとそうにちがいない!」
そう思って、見たところ、
「お粥のかき混ぜごっこ」と出ていました。
お粥のかき混ぜごっこ?
泥んこをどこからか持ってきて、
鍋にも入れず、地面に置いてお粥に見立て、かき混ぜて遊んでいるんだろうか?
通常ならば、馬か何かが落っことしていった糞なるものを、
子どもがつついて遊んでいるとみるべきではないか?
この絵に関しては、明治大学名誉教授・森洋子さんが緻密な解説書を書かれています。
あんまり気になったので、
思わず買い求めて、真相を確認してみました。
この絵の中には、研究者の中で、
何の遊びなのか意見が分かれているものがいくつかあるようです。
これもその一つで、
その有力な一つの見方が、「お粥のかき混ぜごっこ」。
そしてやはり、かき混ぜているのは泥んこではなく、「おそらく牛の糞」であり、
それをお粥に見立ててかき混ぜているとのこと。
どうも人気の遊びだったようです。
しかし、別の研究者は、「棒の先にこの汚物をつけて、
友達の鼻先に持って行って反応をおもしろがる遊び」だと解釈している。
この解釈はなんとなく、よりアラレちゃん的で、
そういう解釈があることに、得心がいきました。
しかしながら、さらに突っ込んだ意見が紹介されていました。
その少女がつついている向かって左に、穴の空いた木の箱のようなものが置いてあります。
これが「オマル」であり、
この子はその中から取り出した人糞をかき回して遊んでいるのだと。
なんとも、これは想定外!
(とは言っても、アラレちゃんの棒きれの先についているのが、
牛のモノなのか、人由来のモノなのか、知らないんだけれども…)。
ちなみに、この「オマル」は、「子どもの椅子」という見方をする人もいて、
なんでも、歩行器のように中に入って歩き回るのに使われたとも説明されていました。
一つ一つ、見ていくと、本当に飽きません。面白い。
最後に、透明フィルムに遊びの名称を書いてみたものを載っけておきます。
(参考資料・ブリューゲルの「子供の遊戯」──阿蘇気の図像学──森洋子)
それにしても、今の日本の現状を描いたら、
ぽつんとゲーム機をもって座り込む男の子が真ん中にいる…そんな絵になりそうですよね。